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ミサイル被害 保険金は受け取れるのか?


近頃、ニュース番組などでよく話題になる北朝鮮のミサイル発射実験。今年に入ってすでに10回、弾道ミサイルを日本海に向けて発射しており関連各国で軍事的緊張が高まっています。
今回は、仮にミサイルによって家屋の破損など何らかの被害が出た場合に、どういった補償が受けられるかという点を、深沼幸紀弁護士にお聞きしました。

大事な家が被害に・・・火災保険は下りる?

― 例えば、ミサイルが落ちてきたとか、ミサイルを迎撃した際の破片で、自らの持ち家が壊れた場合、火災保険で保険金が下りることはあるのでしょうか?

深沼弁護士:大手損害保険会社の火災保険約款には、「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動」によって生じた損害については、保険金を支払わないとの規定が設けられています。
外国から発射されたミサイルが落ちて自らの持ち家が壊れた場合、「外国の武力行使」によって生じた損害に該当しますので、保険金は下りないものと考えられます。
また、ミサイルを迎撃した際の破片で、自らの持ち家が壊れた場合でも、外国がミサイルを発射した時点で、「戦争」状態に入ったと認定され、「戦争」によって生じた損害に該当するものと考えられ、保険金が下りない可能性は高いです。

― 例えば、迎撃しようとミサイルを発射しようとしたが、失敗をして、その迎撃用のミサイルが飛んできて持ち家が壊れた場合は、保険金は下りるのでしょうか?

深沼弁護士:この場合も「戦争」による損害に該当する可能性が高く、約款上、保険金を支払わないとされる可能性が高いと考えられます。

賃貸マンションが被害に・・・保険金の支払いは?家賃を払う必要性は?

― 逆に、持ち家ではなく、賃貸だった場合、その賃貸マンションが被害を受けた場合、家を借りている我々はどういった形で補償を受けることが考えられるのでしょうか?

深沼弁護士:賃貸マンションでも火災保険に加入するケースが多いと思われますが、上記のとおり、保険金を支払わない場合に該当することがほとんどです。

それは、マンションの部屋の中の家財道具などについてということでしょうか?

深沼弁護士:ご指摘のとおり、借主は、マンションを賃借する際に、家財道具の補償や貸主への補償を目的とした火災保険に加入しますが、このタイプの火災保険でも、約款上、「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動」によって生じた損害については、保険金を支払わないとの規定が設けられていますので、保険金を支払わない場合に該当し、マンションの部屋の中の家財道具などについても、補償されないことになります。

― 借りている家がミサイル被害によって住めなくなった場合、その家の賃貸借契約はどうなるのでしょうか?家がミサイルによって壊れた場合も家賃を払い続ける必要があるのですか?

深沼弁護士:民法611条1項によれば、賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、借主は、滅失部分の割合に応じて、家賃の減額を請求することができるとし、同条2項によれば、残存する部分のみでは借主が借りた目的を達成することができないときは、賃貸借契約を解除できるとされています。
仮に、借りている家がミサイル被害によって火災が発生し、全焼した場合のように、賃貸借の目的物を借主に使用させることができなくなった場合は、賃貸借契約は当然に終了することになります(ここでは、借主が賃貸借契約を解除すると意思表示することも不要です。)
借りている家がミサイル被害によって住めなくなった場合は、その被害状況によって変わり、残存する部分だけでは、家に住むことができない場合は、民法611条2項により、借主は賃貸借契約を解除することができると考えられますので、契約解除後は、家賃を払う必要はないことになります。そもそも、借りている家が滅失してしまった(残存部分がない)場合は、賃貸者契約は消滅し、家賃を支払う必要もなくなります。

何らかの補償を受けられる見込みは?

― ありがとうございます。そうすると、ミサイルが飛んできたことによって被害を被ったとしても、損害保険によってその被害について保険金の支払いを受けることは難しそうですね。ほかには何か、我々が補償を受ける方法はないのでしょうか?

深沼弁護士:日本国に対して補償を求めることが考えられますが、現在のところ、ミサイルの発射や迎撃によって国民の人命や財産に被害が生じた場合の補償について、直接規定する法令は見当たりません。
ミサイルの迎撃は、自衛隊法第82条の3(弾道ミサイル等に対する破壊措置)、自衛隊法第82条の3第3項に規定する弾道ミサイル等に対する破壊措置に関する緊急対処要領に基づいて行われますが、これらの法令でも、補償については規定されていません。

もっとも、明らかな誤射によって持ち家が壊れたのであれば、誤射した主体である日本国に
対し、国家賠償法に基づく損害賠償請求を行うことは可能であると考えられます。しかしながら、この場合でも、迎撃ミサイルの発射が他の人命や財産に対する被害を守るための正当防衛行為であると評価される場合が多いと考えられ、違法性が否定される結果、賠償義務も否定される可能性があります。

他に考えられる選択肢としては、国民の財産権の保障を定めた憲法29条3項(「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」)に基づく補償請求をすることですが、同規定が、ミサイルによる被害、迎撃による被害についても補償する趣旨か判断された事例はなく、未知数と言わざるを得ません。
仮に、ミサイルによる被害、迎撃による被害が生じた場合は、特別に立法がなされることになるのではないでしょうか。

― なるほど。地震のような大規模災害の時のように、特別の立法がなされることがあり得るわけですね。ミサイルが飛んでくるような事態にならないことを祈ってはいますが、万が一の事態について勉強になりました。ありがとうございました。


(弁護士トーク編集部より)
北朝鮮によるミサイル開発が加速し、ネット上など様々なメディアで「戦争」が起こる可能性について取り上げられています。
例え戦争で被害を受けても補償を受けられる見込み現在のところ未知数のようですし、なにより戦争など誰にとっても良いことはないので、なんとか穏便に解決することを願うばかりです。

今回はミサイルによって被害をうけた場合についてお話をお伺いしましたが、
ミサイル被害に関わらず、家やマンションなどに何か損害を受けた時は、損害賠償請求が可能な場合があります。
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深沼 幸紀(ふかぬま こうき)弁護士
事務所名:大本総合法律事務所
事務所URL:http://www.ohmoto.biz/

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