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報道番組でTwitter動画を無断使用・・・法的問題は?



近年、一般人が、自身が撮影した映像などを、Twitterなどに投稿した結果、それがいわゆるバズる結果となり、テレビ局やメディアの担当者の目に止まり、そのような一般人が撮影した映像などがテレビ等のメディアで流されることも多くなってきました。
その一方で、メディアに利用されることを好まない一般人もいるため、利用を望むメディア側と、当該映像を撮影した一般人との間でトラブルが起きることもあります。
先日、「とくダネ!スタッフ」というアカウントから、番組内での映像の使用の許諾を求める連絡とともに、午前8時の放送までに返信がない場合、使わせてもらう、といった趣旨の連絡が撮影者になされ、その是非が問題となったことも記憶に新しいと思います(その後、実際に許諾を得たという情報もありますが、真偽までは確認できていません。)。
そこで、今回は、このような河川氾濫の映像を、撮影者の許諾なくテレビ番組が利用することの法的な問題点の有無について、八木優大弁護士にお話をお聞きしました。

Twitter投稿動画の無断使用・・・法的問題は?


- 今回のような事例では、どういった法的な権利が問題となってくるのでしょうか?

ツイッター上に投稿した動画について考えられる権利としては
①著作権  ②肖像権  ③プライバシー権  ④パブリシティ権
などがあります。
この点、①著作権については、撮影者(一般的には投稿者)が撮影した災害映像が著作権として保護される「著作物」に該当するのかが問題となりますが、「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義付けられているところ、単に災害状況を撮影しただけであっても、その撮影のアングルや焦点の合わせ方などから撮影者独自の意思がそこに含まれていると考えられ、「創作的に表現」した「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に当たるといえるでしょう。
よって、ツイッターに投稿された動画は著作権法上保護されることになります。

その他、②~④は「動画内に写っている被写体」を保護する権利です。
災害状況を撮影した場合に、そこに被災者などの第三者が写っていた場合には、当該人物の②肖像権の侵害になりえますし、第三者の個人情報(例えば住所など)が写っていた場合には③プライバシー権の侵害になる可能性があります。また、これはあまり考えにくいことかもしれませんが、写っていた人物が芸能人やスポーツ選手などの著名人の場合には、肖像から生じる経済的利益を支配する権利としての④パブリシティ権の侵害にあたります。

テレビ局側へ損害賠償は請求できる?


- 具体的に、今回の事案で、テレビ局側に法的な責任は発生するのでしょうか?

前述の①~④の権利がテレビ局によって侵害されているかが問題となり、これらの権利を侵害しているといえればテレビ局側が法的な責任を負うことになります。
まず、①著作権についてですが、テレビ局による使用が、
(1)著作権法32条(いわゆる「引用」)に当たり許されるかどうか
(2)同法41条(いわゆる「報道利用」)に当たり許されるかどうか
が問題となります。(1)については、「引用」に当たるといえるためには、従来の判例の考え方からすると、
 引用する著作物と、自分の番組とが明瞭に区別できること(明瞭区別性)
 自分の番組が「主」で、利用する他人の著作物が「従」という主従関係があること(主従関係)
が必要とされています。さらに、「引用」に当たったとしても、「引用」が、
「公正な慣行に合致するもの」
「報道」の「目的上正当な範囲内」
で行われている必要があります。この点、今回のような場合、番組において放送する際に、テレビ局側がツイッターに投稿された映像であることを表示せずに、当該映像を使用した場合には、アやウに反するため、著作権法32条の要件を満たさないことになりますが、テレビ局側としてその点はカバーしている可能性が高く、また、報道目的での使用であるとも考えられるため、ア、ウ、エの要件は満たすと思われます。
他方、イ主従関係の要件については、その映像が使用された時間に対してテレビ局側独自の解説等がどの程度なされたか、例えば、映像のみを流してほとんど解説等をしなかったような場合には、自分の番組よりも、使われた映像の方が「主」であると判断される可能性はあるかと思われます。テレビ局側が自分の番組が「主」と判断できるような構成で放送していたといえれば、(2)の要件を満たすことになるでしょう。

以上からすれば、テレビ局側がツイッターに投稿された動画であることを表示し、また、当該動画以上に自身の番組が「主」になるよう強調していた場合には、著作権法32条の要件を満たし、テレビ局側は損害賠償請求等の法的責任を負わないということになります。

報道番組での利用に許可は必要ない!?


次に(1)「引用」とは別に、(2)「報道利用」の要件を満たし、テレビ局側が保護される可能性もあります。(2)については、
「時事の事件を報道する場合」であること
当該映像が「事件を構成」するか、「事件の過程において見られ、若しくは聞かれる」ものであること
報道の目的上正当な範囲内であること
出所を明示する慣行があれば、出所を明示すること(この要件のみ同法48条1項3号)
の要件を満たしている必要があります。
この点、アについては、本件の場合、テレビ局側が使用しようとしたのが、当該映像が撮影されてからどれくらい期間が経過していたかは確認していませんが、河川氾濫の災害が起きた当日ないし翌日程度であれば、「時事の事件を報道する場合」に当たるといえるでしょう。
これが1週間後といった場合には、この要件を満たさない可能性があります。
また、河川氾濫の状況を撮影した映像であれば、河川氾濫というイ「事件を構成」する映像であり、また、ウ、エについては(1)「引用」の場合のア、ウ、エの場合と同様に要件を満たすことが多いでしょう。

以上からすれば、テレビ局側が、撮影された映像を河川氾濫後間もなく報道目的で使用し、ツイッターに投稿された動画であることやその投稿者名等も表示していれば、著作権法41条の要件を満たし、テレビ局側は損害賠償請求等の法的責任を負わないということになります。
なお、これらの著作権の例外規定については、「マスコミが無断で映像を使用してけしからん。」という考え方もあるかと思いますが、もともとマスコミは、営利企業ではありますが、報道機関であり、国民の知る権利に寄与するという側面も有していることから、このような報道目的での利用は、自分たちの権利のためにもなっているという側面があることも考えていただきたいと思います。著作権法が例外を認める趣旨もそういった点にあります。

以上までが①に関する解説でしたが、②~④については、そもそも河川氾濫の映像に②~④で保護される個人情報等が映っている可能性は低く、仮に映っていたとしても、テレビ局側でモザイク処理をしている可能性が高いため、そういった処理がなされていなかった場合に限り、損害賠償請求等の法的責任を負うことになると思われます。
また、権利侵害とは別の観点としては、投稿された映像が虚偽の映像であったような場合には、テレビ局としての信頼が損なわれるといった問題があります。

違法でなくても、許可はとるべき!


これまでテレビ局側には基本的には法的な責任は負わないという解説を致しましたが、仮に法的に責任を負わないとしても、今回の「とくダネ!スタッフ」としての行動については、自らの利益追求のことしか考えておらず、非常識だと思われかねない行動だったと思います。
報道機関としては、可能な限り権利者の許諾を得るよう努力し、仮に許諾を得ることができなかったとしても、前述の要件で述べたとおり正当な報道の目的のための使用であることを丁寧に説明し、権利者のみならず視聴者全体の理解が得られる対応をすることが望ましいと思います。

なお、以上述べたことはあくまで報道されている情報を見た限りの解説であり報道されていない事情によって変わってくる可能性があります。実際には個別具体的な事案毎に結論が異なってきますので、もしインターネット上で自身の権利が侵害されていると思った場合には、まずは弁護士にご相談されることをおすすめいたします。




<弁護士トーク編集部より>
SNSにアップされる画像や動画を無断で使用する場合、その内容によっては著作権、肖像権、プライバシー権、パブリシティ権など、様々な権利が問題になる場合があります。
もしも、ご自身のアップした画像・動画などが無断で使用され、対応に困った場合はまず弁護士に相談してみてください。
弁護士トークなら無料チャットでお気軽にご相談が可能です。

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