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なぜ「異例」?危険運転致死傷罪で石橋容疑者を起訴!

大本康志弁護士

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所属事務所: 大本総合法律事務所

先日、東名高速であおり運転の末、相手の車を追い越し車線で停止させ、そこにトラックが追突し、停止させられた車に乗っていた夫婦が死亡した事件で、被疑者が危険運転致死傷罪で起訴されたというニュースが流れましたが、異例の起訴だという形で報道されました。
今回は、刑事事件について詳しい、大本総合法律事務所の大本康志弁護士に、今回の事件で危険運転致死傷罪にて起訴されたことがどうして「異例」と言えるのか、などについて、2回にわたって解説していただきます。

「異例」と言われる理由は?


‐ 今回、被疑者が逮捕された際に、ニュースなどでは危険運転致死傷に問うことは難しいのではないかという報道がなされていましたが、それはどうしてでしょうか?

大本弁護士:
危険運転致死傷罪は「運転行為」という行為を処罰対象としている(第2条4号 自動車を運転する行為)ところ、本件の事故により直接の死因となったトラックの追突時においては、被疑者である石橋氏は自車の運転席の位置にすらいなかったことが明らかで、そうだとすると、危険運転致死傷罪の構成要件に該当する「運転行為」があったという認定をすることが難しいのではないか。すなわち、事実を素朴に認定するとすれば、事故時に「運転行為」があったとは認められないのではないかと思われたからです。

今回、報道にありますように、検察庁は同罪にての起訴をするという判断をしたようですが、刑事責任を規定する刑事罰規定については厳密な法解釈(条文解釈)や事実認定が原則とされていることから考えますと、今回は特に異例の判断がなされたといってよいかもしれません。

なぜ拡大解釈してはいけないの?


‐ 犯罪については、条文を限定的に解釈をするのが原則だとのことでしたが、そうすると処罰できない事例も出てくると思いますが、抽象的に規定をする、または拡大解釈をするということはどうしてできないのでしょうか?

大本弁護士:
そもそも犯罪というのは、国家が行為者の行為を戒める=責任を追求することがベースとなっているものです。
そして、国家が事後的にその行為は犯罪として違法行為であると認定して処罰することがあるとすると、我々一般人は「自由」な活動が一切できなくなってしまいます。それゆえ、事後法による処罰は一律禁止されています。
また、このように、国家が犯罪と認定するためには、事前に違法行為を列挙しておく必要があるとされている(遡及処罰の禁止)のですが、さらに、事前に犯罪類型とされた行為類型が「限定的である」ということではじめて、われわれ一般人において「それ以外の行為は自由に活動できる」(=犯罪とならない)という機能(自由保障機能)を十分果たせることになります。
なぜなら、犯罪類型が曖昧不明確で、(限定的でなく)拡大解釈されてしまうことが許されてしまうと、いわゆる事後法による処罰と同様、自由な活動行為の予測可能性を失なわせ、我々一般人は実質的な自由が確保されないという極めて恐ろしいこととなってしまいかねないと考えられているからです。

‐ 法律の専門家ならともかく、今回の被疑者は、問題となっている危険運転致死傷罪の構成要件をよく知った上で、なお「これ(運転席を降りて暴行することなど)なら、少なくとも重い「同罪」の責任は問われないだろう」という自由保障があることを知って行為をしていたということは事実上考えにくいと思いますので、仮に今回の被疑者を同罪により処罰したとしても同人の自由保障がいたずらに不当に侵害されるということにはならないのではないでしょうか?

大本弁護士:
確かに、今回の被疑者において具体的に危険運転致死傷罪の構成要件(条文の文言に記載された意義)を知っていなかった可能性があり、それゆえに、被疑者において本件行為について具体的な自由に対する信頼をなして行動をしたということはなかったのかもしれません。そして、それをつきつめていくとすれば、当該被疑者の行為について危険運転致死傷罪を適用したとしてもさほど不当な不意打ちにはならないのかもしれません。

しかし、上述したようにそもそも犯罪というのは私人が対国家ということとの関係性にて規制されるべきものであって、刑罰権という巨大な国家権力の発動をするにあたって事前の法律による裏付け(当該行為が、法が予め規定する「構成要件該当行為」であるということなど)が必要というルールを定め(刑事訴訟法など手続法も含む。)、かかるルールに則ってはじめて適正に刑罰が施行されるということとなっている(その趣旨は憲法に規定されている。それゆえ憲法は自由の保障法といわれる。)のであるから、本件行為に危険運転致死傷罪の適用をするということは、かかる抽象的な自由保障機能を害することとなりかねないという危険を孕むことになり、その点が問題視されているというべきであります。

すなわち、ここで問題とされるべきは国家権力(検察権)の発動が不当な発動ではないかということであって、当該事件の具体的な行為時における当該私人の認識それ自体を問題としているのではないということであります(※なお、本件被疑者の責任追求場面である本件裁判においても、被疑者において本件構成要件に該当することの認識を要求することはない(本件行為が本件構成要件に該当しないという認識を有していたとしてもそのことは同罪適用の妨げとはならない)と思います。(法適用の錯誤は故意を阻却しない=法の不知は害する)。)

(第2回につづく)


<弁護士トーク編集部>
第1回目は、なぜ今回の事件で危険運転致死傷罪で起訴されたことがなぜ異例と言われているのかについて解説いただきました。
非常に痛ましい事件の内容に私たち一般人は、悪いことをしたのだから厳罰をと思いがちですが、法律を柔軟に解釈することは国民全体の自由を制限することになりかねないのだということが分かりました。
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