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弁護士が業務停止に...着手金は?依頼者はどう対応すべき?


先日、全国規模で展開し、テレビCMも流していたアディーレ法律事務所に対して、2ヶ月の業務停止処分が課されました。依頼者は数万人いるといわれており混乱が広がりました。
今回は、依頼している弁護士が業務停止となった場合、依頼者はどう対応すれば良いのか、という点について弊社インハウスロイヤーに解説していただきました。

委任契約はどうなるの!?


‐ 依頼している弁護士が業務停止となった場合、当該弁護士と依頼者の間の委任契約はどうなるのですか?

依頼している弁護士自身が業務停止の処分を受けた場合、被懲戒弁護士は、
「受任している法律事件(裁判所、検察庁及び行政庁に係属前のものを含む。)について、直ちに依頼者との委任契約を解除しなければならない。」
とされています(被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準(日本弁護士連合会)(以下「本基準1」といいます。)第2の第1項)。
ただし、業務停止の期間が1ヶ月以内であって依頼者が委任契約の継続を求める場合には、被懲戒弁護士は委任契約を継続することができます(同項)。
したがって、依頼している弁護士が1ヶ月より長い期間の業務停止処分を受けた場合、当該弁護士から委任契約の解除に関する連絡があるものと思われますが、連絡がなかった場合には、ご自身で委任契約を解除する旨の連絡をすることをおすすめいたします。

なお、今回の弁護士法人アディーレ法律事務所のように弁護士法人自身が懲戒処分を受けた場合には、若干規程が異なります。
弁護士法人が業務停止処分を受けた場合も、被懲戒弁護士法人が直ちに依頼者との委任契約を解除しなければならない点は、弁護士個人が業務停止処分を受けた場合と同様です(弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準(日本弁護士連合会)第2の第1項)。
ただし、依頼者が被懲戒弁護士法人に所属する弁護士個人(社員等)に受任を希望する場合には、当該弁護士個人に引継ぎを求めることができます(同第2の第9項)。
したがって、仮に弁護士法人自体が業務停止処分を受けたとしても、担当の弁護士自身が処分を受けていない場合には、希望すれば、当該弁護士に引き続き事件を依頼することができます。

支払い済みの着手金はどうなるの?


‐ すでに支払った着手金については、どうなるのでしょうか?

依頼した弁護士が1ヶ月より長い期間の業務停止処分を受けた場合、前述の通り、委任契約は解除されることになります。
解除後の着手金の扱いについては、基本的には当該弁護士との委任契約書の内容に従うことになりますが、事件処理の状況によっては一部返還されないということになることが多いと思われます。
この点、委任契約書上の規定として、
(1)「委任契約が解除された場合には、着手金を全額返還する。」といった旨の条項(全額返還条項)がある場合
(2)「委任契約が解除された場合には、事件処理の程度及び協議に基づき、全部又は一部返還をする。」といった旨の条項(協議条項)がある場合
(3)「委任契約が解除された場合であっても、着手金は返還しない。」といった旨の条項(不返還条項)がある場合
(4)委任契約の解除後の処理について特に規定がない場合
(5)その他(1)~(3)以外の規定がある場合
が考えられます。
(1)(全額返還条項)の場合は、依頼者に全額返還されることになりますが、このような条項を定めている弁護士は多くないでしょう。
(2)(協議条項)の場合は、事件処理の程度及び協議に基づき、一部返還されない可能性もあります。日本弁護士連合会が会員向けに参考書式として公開している委任契約書にはこのような趣旨の条項が設けられており、このような委任契約書の内容にしている弁護士は多いのではないかと思われます。
この点、弁護士の債務不履行によって委任契約が解除された場合の着手金の取扱いについて判断した判例(大阪高判平成22年5月28日判時2131号66頁)は、
「訴訟委任契約に伴う着手金は、弁護士への委任事務処理に対する報酬の一部の前払の性質を有するものであり、この訴訟委任契約が受任者である弁護士の債務不履行によって解除された場合には、原則として、受領した着手金を返還すべきであるところ、その契約の解除に至るまでの間に委任の趣旨に沿った事務処理が一部されたときは、同事務処理費用のほか、その委任契約全体に占めるその事務の重要性及びその事務量等を勘案して、その分に見合う額については返還することを要しないと解するのが相当である。」
と判示しています。
この判例の考え方に従っても、事件処理で活動した部分については返還されないことになるかと思われます。
(3)(不返還条項)の場合、これもこのような条項を設けている弁護士はほぼいないと思いますが、仮にこのような条項が設けられていた場合でも、先にあげた判例の考え方に従えば、解除前までになされた活動以上に着手金を受領することは許されないことになりますので、結果としては(2)と同じように処理されることになると思われます。
その他(4)、(5)についてもやはり先の判例の考え方に従って、(2)と同じように判断されることになるでしょう。
以上から結論としては、事件処理の状況に応じて一部返還されない可能性もあるということになるでしょう。
なお、弁護士法人が業務停止処分を受けたが、当該弁護士法人の社員等の弁護士に引継ぎを依頼した場合についても同様に、基本的には当該弁護士法人から一部又は全部着手金の返還がなされることになると思われますが、当該弁護士との協議により、当該弁護士に別途着手金の支払いはせず、弁護士法人からも着手金の返還は受けないといった扱いになるのはないかと思われます。

依頼者がとるべき行動は?


‐ 当該弁護士に依頼している破産手続きや訴訟手続きは影響を受けるのでしょうか?

上述のとおり当該弁護士は依頼者との委任契約を解除しなければならないため、破産手続きや訴訟手続きにおいて、主張・立証活動を行う等の訴訟行為を行うことはできません。
また、被懲戒弁護士は、期日の延期及び変更の申請をすることができないとされています(本基準1第2の第3項)。
そのため、被懲戒弁護士としてはすでに決まっている期日に影響が出ないよう誠実に引継ぎを行う必要があります。
したがって、業務停止処分により当然に期日が延期されるわけではないため、業務停止処分を受けた弁護士に依頼をしていた場合には、すみやかに新たな弁護士を見つけて引継ぎを依頼することをおすすめ致します。

(文責: 弁護士トーク株式会社 インハウスロイヤー 八木優大弁護士)



<弁護士トーク編集部>
アディーレ法律事務所の業務停止処分を受け、東京弁護士会が設置した相談窓口には4日間で3000件を超える問い合わせがあったそうです。
依頼していた法律事務所、弁護士が突然の業務停止処分となってしまった場合、ご依頼者の皆様は突然の出来事に混乱され、不安になると思います。
どのように対応すべきかは個々の事案や、進捗状況によって変わってきますので、まずはお早めに弁護士にご相談ください。弁護士トークなら無料チャットでいつでも相談が可能です。
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