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強姦罪がなくなる?


平成29年7月13日、強姦罪等の性犯罪に関する刑法の規定が改正され、施行されました。犯罪の中では、身近ともいえる強姦等の性犯罪。
今回は、この強姦罪等の性犯罪に関する刑法の改正点について、直田法律事務所の直田弁護士にお話を伺いたいと思います。

強姦罪」→「強制性交等罪」に。改正のポイント!

‐ 今回の改正の要点をまずは教えていただいてもよいですか?

直田弁護士:今回の改正の要点は、
・強姦罪という名称が強制性交等罪という名称に変更になったこと
・強姦の被害者が女性に限られなくなったこと(性別の撤廃)
・被害者の告訴が不要になったこと(非親告罪化)
・親等の監護者による子どもへのわいせつ行為を罰する旨の明確化を図ったこと
・法定刑の下限の引き揚げ(厳罰化。3年以上が5年以上に)
が主な点になります。

‐ 名称の変更には意味があるのですか?
直田弁護士:従前は、強姦罪の被害者は女性に限られていました。そのため、女性でない者が、強制的に性交させられた場合は、従前は、強姦罪ではなく、強制わいせつ罪にしかならないとされていました。
しかし、そのような区別は意味を持たないと考えられていたことから、今回、性別による区別は撤廃され、それに伴って、強姦の「姦」という字自体が、女性という意味を持っていることから、強制性交等罪との名称になったものと思われます。

改正によるメリット・デメリット!

‐ 告訴が不要になったという点ですが、これはどのような意味を持ちますか?

直田弁護士:これまでは、被害者の告訴が裁判を行う条件とされていました。そのため、被害者が、どんな理由であれ告訴を取り下げる又は提出しなかった場合、犯罪が明らかであっても、それを裁判で裁くことはできませんでした。
このことは犯罪者の処罰という意味では、被害者の告訴に関係なく、処罰が可能になるということですし、犯罪の抑止という意味でもメリットはあるのですが、被害者の保護という点では、悪い点もあると考えます。

‐ 被害者にとってのデメリットとはなんですか?

直田弁護士:被害者が加害者の処罰を望むのは当然ですが、被害者の全てが法廷において再度被害を語ることや、公開の法廷で(プライバシーはある程度確保されるものの)審理をされることを望むわけではありません。
もちろん、検察官も、被害者が裁判を望んでいないのにもかかわらず、起訴をし裁判を求めることはあまりしないのでしょうが、それでも理論上は、例えば連続暴行犯などであれば、そのような公開の法定での審理を望まない被害者についての犯行の審理を検察官が求める(起訴する)ことも可能です。
さらに、実務的には、被害者の方が、加害者が逮捕された後、これ以上再度取り調べを受けることを望まなくなったり、様々な事情によって、途中で、裁判による処罰よりも、金銭的な賠償を重視する形に考えを変える場合があります。
この場合には、これまでは告訴が裁判の条件でしたので、処罰を免れたい加害者としては、高額の示談金を被害者に(借り入れをしてでも工面をして)支払うインセンティブがありました。
しかし、今回の改正により、告訴が裁判の条件ではなくなったため、高額の示談金を支払うインセンティブがなくなる(又は減殺される)点が、デメリットと言えると思います。

処罰の対象になる行為は? 

‐ いわゆる性交以外も対象となったと伺いましたが。

直田弁護士:そのとおりです。従前は、いわゆる性交、つまり性器の性器への挿入が必要と考えられていましたが、今回は、肛門性交(いわゆるアナルセックス)又は口腔性交(いわゆるフェラチオ)を無理にさせることや、13歳未満の者に同意があったとしてもこれらの行為をすることも強制性交等罪の対象となり、5年以上の有期懲役刑とされました。

‐ 変な話なのですが、いわゆる大人のおもちゃ(バイブ)のようなものを相手の性器・肛門・口腔に無理やり突っ込んだ場合はどうなるのでしょうか?

直田弁護士:その点について、私の方では然るべき資料を確認できていないので、私見ではありますが、性交が、いわゆる性器の性器への挿入を前提としているようですので、そこから考えると、大人のおもちゃの挿入は、強制わいせつ罪とはなったとしても、強制性交等罪には該当しないようにも思われます。
ただ、性器の「挿入」行為は男性が加害者または被害者の場合しか観念できないわけですが、男女の区別が撤廃された経緯も考えますと、例えば女性が自身の女性器を他人の口腔に無理やりこすりつけたらどうなるのか、つまり性器の「挿入」はないが、口腔への性器の接触はある場合に、それは口腔性交と言えるのかどうか、という点は論点としてはあり得ると思います。
また、男性が女性にバイブのようなもので、肛門を犯された場合、強制わいせつにしかならないのか、強制性交等罪になるのかという点も同様の問題をはらんでいると思います。
この点については、現時点ではリサーチができておらず、追加の調査が必要ですので、あくまで私見とさせて下さい。

施行前に起きた事件はどうなる?

‐ 今回の改正法の施行(7月13日)よりも前の犯罪についてはどう扱われるのですか?

直田弁護士:告訴の点を除いては、施行前の犯罪については、従前の例が適用されますので、法定刑や、強姦罪については被害者が女性に限られるといった点については、従前どおりとなります。
告訴については、「この法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際、既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。」とされています。例えば、告訴をしていたものの、その後示談が成立して告訴を取り消していたような場合は、「法律上告訴がされることがなくなっているもの」になりますので、それを裁くことはできません。そのような場合を除き、施行前の犯罪については、告訴がなくても、検察官は公訴を提起することが可能になりました。

‐ ありがとうございました。勉強になりました。

直田弁護士:どういたしまして。加害者となってしまった場合はもちろんですが、被害者となったような場合も、弁護士は適切な情報提供や、プライバシー等に配慮した捜査や裁判を求めるなど、被害者保護においても様々なサポートが可能ですし、そのような場合に、実質無料で弁護士に依頼をすることができる制度を利用できる場合もありますので、まずは弁護士にご相談いただければと思います。


<弁護士トーク編集部より>
今回お伺いした刑法の改正は明治時代の刑法制定以来、110年ぶりの大幅改正だそうです。
性犯罪について幅広く厳罰化を行った今回の法改正で、少しでも多くの性犯罪が抑止されることになればと期待します。

性犯罪は卑劣な犯罪であり、決して行ってはならない行為ですが、もしも犯してしまった場合、またはご家族や身近な方が逮捕されてしまった場合は、なるべく早く弁護士に相談し、早期の解決と社会復帰ができるように努める必要があります。
また被害者の方は、誰かに知られてしまうことを恐れて泣き寝入りする場合も多くあるようですが、一人で悩まず、まずは弁護士に相談してください。
弁護士には守秘義務がありますし、ご相談者様の意向に沿ったサポートをしてくれると思います。

弁護士トークなら無料チャットで相談可能です。是非ご利用ください。

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直田 庸介(なおた ようすけ)弁護士
日本の大手渉外事務所にて勤務後、スペインのバルセロナ大学にて国際取引法を学びLLMを取得。
その後、スペインの大手渉外事務所及びバルセロナの法律事務所に出向・勤務。
帰国後、直田法律事務所を開設し、スペイン語圏の企業を依頼者とした企業間紛争や契約交渉等から民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っている。
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